一流のバンドであれば、火傷しそうな個性がぶつかり合うことは必然かと思います。
特に、ビートルズのように、偉大な才能が集まったグループであれば、自我が衝突しないほうが不思議というもの。
そんな中にあって、リンゴ・スターの存在は、4人組を繋ぐ潤滑油のような役割を果たしていたようにも思います。
リンゴ・スターが、ビートルズとして最後に自ら手がけ、歌ったのは、アビーロードに収録されている『オクトパス・ガーデン』。
ビートルズの後期は、4人揃って演奏する機会が減っていましたが、リンゴのこのナンバーでは、全員がレコーディングに参加しています。
軽快なリズムと、ちょっぴり童話のような世界観を感じるオクトパス・ガーデン。
ただ、よく歌詞を読むと、「海の底へ逃げて行ってしまいたい」と、現実世界から逃避しようとする思いの一端を垣間見ることができます。
リンゴ自身も、いろいろとストレスを感じていた時期だったのでしょう。
このオクトパス・ガーデンを制作するにあたっては、かなりの部分、ジョージ・ハリスンが手を貸していると伝えられています。
コード進行をはじめ、ある意味ジョージとリンゴで作り上げていったナンバーだと言えるかもしれません。
激しくなるジョンとポールの対立、意見の食い違い。
そんな時期に、ジョージとリンゴが、共同作業をして作り出したナンバーだと思うと、何かしら感慨を抱きます。
当時、リンゴが抱いていた心理を、実に巧く表現した名曲のひとつだと思います。