ビートルズ解散が近づくにつれ、4人はそれぞれのカラーを出し始めていきましたね。
このアルバムからだ!と、断言するのは難しいものの、おそらくホワイト・アルバムを区切りとして、目指すものの違いが鮮明になってきたように思います。
時々思うのですが、ことポール・マッカートニーに関しては、きっと「バンドをやりたい!」という気持ちが強かったのではないでしょうか。
サージェント・ペパーズという架空のバンドをつくったり、ゲットバック・セッションを行ったりと・・・。
また、ポールは、ビートルズ解散後も、近くにいてくれる相棒を欲していたのではないか?
と、私は考えています。
ビートルズ時代にジョンがいたように。
ビートルズを卒業してからのポールは、ウィングスを結成したりと、ライブ活動も精力的に行いますが、常にポールは王様だった。
王とは孤独なものでもありますよね。
ポールが渇望していたのはジョン。
ジョンが死して後は、ジョンの代わりを果たしてくれる人物を求め続けていたのではないでしょうか。
マイケル・ジャクソンやスティービー・ワンダーとも共演していますが、あれなどは、単に一緒にやってみました・・・というもので、ポールにとっての相棒などでは、決してなかった。
ポールにとって、実に大きな転機は、エルビス・コステロに電話をし、協力を要請したところにあると、私は思っています。
エルビス・コステロといえば、幼少時代からビートルズを愛し、フットボールでもリバプール・ファンだという生粋のビートルズ・フリークです。
それでいて、反骨精神が強く、妥協しない。
エルビス・コステロは、ポールに対しても、曲の良し悪しをはっきりと言ったそうで、「この曲はクズだ!」とさえ、ポールに直言したそうです。
まさに、当時のポールにとっては、ジョンの代わりを果たしてくれる男が見つかった。
そんな思いだったことでしょう。
エルビス・コステロを迎えて、1989年にポールが発表したアルバムが、「フラワーズ・イン・ザ・ダート」です。
このアルバムには、ポールとコステロの共作も含まれており、二人の持ち味が絶妙なハーモニーを奏でています。
曲の作者、そのクレジットにも、二人の名前が並べられ、まるで「レノン・マッカートニー」時代を思い出させる色合いが出ています。
共作の中でも、特にコステロ色が強いのは、「You Want Her Too」ではないでしょうか。
エルビス・コステロという相棒を得たポールの声は、心なしか元気に聞こえます。
やはり、こういった風景を思うと、ポールは常に、ずっとずっとジョンを探していたのだな・・・と実感します。
ポールに対して、「その曲はクズだぞ」と言える存在。
それこそが、ポールの求めていたものであり、孤独の顕れだったことでしょう。