プログレッシブロックと呼ばれるジャンルにおいて不動の地位を築いてきた代表格といえば、まずピンク・フロイドの名前があげられるかと思います。
ピンク・フロイドは、60年代中期には既に活動をはじめており、そういった意味ではビートルズの現役時代と被っているということになります。
ビートルズと距離が近かった人々の証言によれば、特にジョン・レノンは、ピンク・フロイドのサウンドにも影響を受けた部分があるようです。
ただ、ビートルズが現役当時のピンク・フロイドは、シド・バレットが中心人物であり、今で言うプログレッシブロックとは異なるものがあり、かなりサイケ色の濃い作品を創作していました。
シド・バレットが病のため脱退し、その後任としてピンク・フロイドに加入したデビッド・ギルモアが音作りの中心になってからが、いわゆるプログレッシブロックたるピンク・フロイドサウンドの確立だと言ってもいいと思います。
となると、いわゆるプログレッシブロックとはこれだ!という形を鮮明に見せつけたのは、キング・クリムゾンだと言ってよさそうです。
キング・クリムゾンが、そのデビューアルバム『In The Court Of The Crimson King』邦題:クリムゾン・キングの宮殿をリリースしたのは1969年のこと。
事実上ビートルズ最後の作品となったアビーロード発表年と重なります。
当時、かなりの話題になったのは、ビートルズ渾身のラストアルバムから新人バンドのデビューアルバムが、ヒットチャート1位の座を奪った!ということでした。
後年、チャートの1位という解釈については異論も出ていますが、レコード(LP盤)が、日本で売られていた際には、その帯に、アビーロードをチャート1位から蹴落としたアルバムとしての説明がしっかり書いてあったことを記憶しております。
異様なレコードジャケット。
レコード盤をプレイヤーに置き、針を落とす。
あのときの妙な緊張感を私はいまでも忘れることができません。
69年当時にして、こんなサウンドが出来たのか!という驚愕にも似た思いで、むさぼるように聴き続けたことを憶えています。
アルバムに収録されたどのナンバーも凄いものでしたが、とりわけインパクトがあったのは、やはりA面1曲目で、いきなり大音響でイントロがはじまる『21st Century Schizoid Man including Mirrors』ですね。
他のナンバーは、叙情的なものが多いのですが、この冒頭に出没するサウンドは、驚天動地のような衝撃でした。
この時代に、これだけの演奏をするバンドがいたのか!と。
1曲目で、いわゆるブチカマシをやってのけたキング・クリムゾンは、神秘的かつ叙情的な世界へとリスナーを誘っていきました。
ビートルズが解散し、イギリスに新しい風が吹きはじめた時代。
この時期には、カリスマ的なギタリストも多々登場してきており、文字通りロックがすごいことになった時代だと言っていいと思います。
ただ、ひとつ言い添えておきたいのは、キング・クリムゾンは、かなり実験的要素を濃くもったバンドであり、そういった意味では、ビートルズがリボルバー以降に見せたアプローチも生きていたかと、私としては思っています。