『ザ・ビートルズの誕生はいつか?』とういことを考えはじめると、話が長くなりますが、こと『アルバム・デビュー』という言い方をするならば、1963年3月発表の『プリーズ・プリーズ・ミー(Please Please Me)』であるとして間違いはないと思います。
ジャケットになっている写真は、当時のEMI社の吹き抜けで撮影されたスナップが採用されており、あの時代としては画期的なことでした。
また、このファースト・アルバムの正式名称をきちんと書くと・・・
'Please Please Me / with Love Me Do and 12 Other Songs'
という長いタイトルとなります。
ちょっと違和感を覚える方々もいらっしゃると思いますが、当時としてはよくあるパターンで、たとえば、アルバム・タイトルを見ただけで、ある程度の時代を推定することが出来るというもの。
要するに、プリーズ・プリーズ・ミーとラヴ・ミー・ドゥその他12曲・・・という書き方で、全14曲収録であることが、すぐに分かります。
ビートルズは、このアルバムを発表する前に、既に2枚のシングル盤を世に出しています。
①ラヴ・ミー・ドゥ / P.S.アイ・ラブ・ユー(A面、B面)
②プリーズ・プリーズ・ミー / アスク・ミー・ホワイ(A面、B面)
ということは、アルバムでのデビュー前に、4曲は出来上がっていたということになります。
驚くべきは、残り10曲の仕上げ方です。
かのジョージ・マーティンは、ビートルズのホームともいえるキャバーン・クラブでのライブ収録構想をもっていたようですが、結果的には(現)アビー・ロード・スタジオで録音。
それをたった一日で、すべてやってのけたそうです。
まさに、ライブ感覚、臨場感を優先していたことが伺えます。
記念すべきファースト・シングルとなった『ラヴ・ミー・ドゥ』が収録されているという点でも、ビートルズの記念碑的な作品である!と言っていいと思います。
ラヴ・ミー・ドゥといえば、ジョン・レノンのハーモニカが、実に印象的ですが、このアイディアは、ジョージ・マーティンによるものだとも言われ、後年ポール・マッカートニーは、そのときのことを振り返り、「初めての経験だったし、ボーカルを取るときに、とても緊張した」と、語っているそうです。
また、このアルバムで注目すべき点のひとつとして、最初の曲と最後の曲に、ロックンロール、あるいはブラック・ミュージックがかったナンバーを持って来ていることが、あげられると思います。
アルバム冒頭に収録されているのは、『アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア』
ラストは、『ツイスト・アンド・シャウト』
このチョイスは、ビートルズ4人の「やってやるぞ!」という意気を感じるようで、実に気持ちがよいものだと思います。
『プリーズ・プリーズ・ミー』
まさに、世界を変える産声があがった瞬間だと言っていいでしょう。
本当に、日の出の勢いを感じさせる、元気の詰まった名盤だと思います。