ビートルズに、バンドとしての危機が訪れ始めた頃、くしくも、新しいロックの波を創造するかのような、独創的なバンド達が、続々と現れてきます。
ピンク・フロイドもそのひとつ。
シド・バレットが中心となって織りなすサウンドは、ジョン・レノンに、かなりの刺激を与えたと、ビートルズ周辺にいた関係者も語っています。
私は、シド・バレットは、ロック史に輝くダイアモンド、最高の天才の一人だと、かねてから思ってきました。
ただし、ピンク・フロイドが、信じられないほどのアルバム・セールスを記録し、商業的にも大成功を収めるのは、シド・バレットが脱退し、後任のギタリストとして迎えられたデビッド・ギルモアが、音作りに携わりはじめてからとなります。
ビートルズとピンク・フロイド・・・。
交わる点がないように思いがちですが、実は、ポール・マッカートニーとデビッド・ギルモアは、仕事を共にしています。
ポール・マッカートニーの強い希望により、「どうしてもデビッドのギターがほしい」という話になったと聞きます。
たとえば、1989年に発表されたポール・マッカートニーのアルバム『フラワーズ・イン・ザ・ダート(Flowers In The Dirt)』では、デビッド・ギルモアがギタリストとして録音に参加。
また、ポールの作品中でも、かなり人気の高い曲である『ノー・モア・ロンリー・ナイト(No More Lonely Nights)』でも、デビッド・ギルモアは、ギタリストとして、ポール・マッカートニーから呼ばれており、おそらく、この時の機会が、二人の関係をつくったのではないか?と、私は推測しています。
私は、ポール・マッカートニーの作品収録に携わった直後に発表された、デビッド・ギルモアのインタビューをあるギター雑誌で読んだのですが、「ポールとやるからには」・・・ということで、ポール自身の希望も聞いた上で、サウンドがフィットするように、ギター・アンプの選定にも、随分と気を遣ったようです。
デビッド・ギルモアなりに、数種類のギター・アンプを選び、その中からポールの希望に最も近い鳴りをするのはどれか?を突き詰めていったようです。
元々、サウンド・メイクには定評があり、まるで技師のようにエレクトロニクスを楽器、機材に取り入れられるデビッド・ギルモアだけに、ポール・マッカートニーとの共演の際には、かなりの準備をしたものと思われます。
そして、ノー・モア・ロンリー・ナイトは、期待を裏切らない名作となった。
途中で出てくる独特な味わいをもったギター・ソロは、デビッド・ギルモアらしさを彷彿とさせます。
イギリスを代表する2大バンドとも言っていい、ビートルズとピンク・フロイド。
こんなところで、繋がってくるとは・・・。
また、自らの楽曲にデビッド・ギルモアのギターを欲したポール・マッカートニーの眼の付け所も素晴らしかったと思います。
後日、機会があれば、ジョン・レノンが、シド・バレットを中心とするピンク・フロイドに影響、刺激を受け出していたことについても、触れていきたいと思っています。