記憶に頼ることになってしまうのだが、あれは自分が成人式を迎える前後のことだったと思う。
当時、「東京は怖いところ」というイメージがあり、特に新宿は最たるものであった。
そんな自分が沖縄の友達に誘われて行ったライブは、キャバレー・ヴォルテールのステージ。
彼等は1973年に結成されたイギリスのバンドである。
いやー、とにかく前衛的だった!
レコードで聴いてはいたが、このバンドを生で見るとなると、いささかの緊張感さえあったものだ。
ライブといっても、新宿の片隅にあるディスコ・クラブが会場だったので、当然立ち見なのだが、とにかく距離が近い。
手を伸ばせば出演メンバーに触れるくらい。
大袈裟ではなくて。
そこに拡がる音世界と背景に醸し出される映像は、まさに怪奇骨董箱のようだった。
こうして書いていると、徐々に当時の記憶が蘇る。
私が彼等のライブを見に行ったのは、ちょうどアルバムThe Voice of Americaを発表した直後のこと。
だとすれば1980年、その少し後ということになる。
このように、まだ青年時代の私はあらゆる音楽を貪ろうと思っていた。
新宿の同じ場所で、スージー・スー&バンシーズのライブも体験することになるのだが、それは後日書いてみたい。
怖い街新宿、その一角に現れたアバンギャルドな空間であった。