Kate Bush
私が通学なんぞというものをしていた時代には、今のように電車の便が多くはなく、路線を乗り換える際には相当な時間つぶしをしなければならなかった。
時間があるといえば、当時の私はほぼ例外なく駅前にあるレコード屋へ通っては、そこに並ぶジャケットを眺めていたものだ。
そんな経験の一部なのだが、ケイト・ブッシュのレコードジャケットを見たときには、何とも表現できない思いに駆られた。
小学校高学年から中学生にかけて、私は沢山の音楽に触れ、勿論ビートルズも聴いたし、クリームしかり、プログレも大好きになっていたのだ。
ケイト・ブッシュは、それらとは異なるアーティストであり、ある意味孤高だった。
彼女のレコード、その帯には「ピンク・フロイド デヴィッド・ギルモアの秘蔵っ子」という言葉が書かれ。
私がより強く興味を持ったのは言うまでもない。
ケイト・ブッシュの世界に触れると人生さえ変わる。
と、言ったら大袈裟だろうか?
それくらいインパクトがあるのだから仕方がない。
歌、サウンド、詩、ビジュアルと、どれを取ってもケイトは異色だった。
そこに内包され、エネルギーを放っている様は、まさに天才のそれだったとしか思えない。
私は、天才という言葉をあまり使いはしない。
しかし、ケイトに関しては間違いなくそう呼ぶべき存在だと思うのだ。
ケイトを称して「子宮で歌う音楽」と表現した人がいたが、よく分からないようで、なるほど!と納得にも似た気持ちになったあの日。
イギリスの歌姫?
そう呼ばれることに異論はない。
しかし、ケイトの世界は、その言葉だけでは足りないと私は思うのだ。
イギリスが生んだ一個の天才、鬼才であり、遠い未来まで彼女の音楽は光を失わないであろう。